【英文法解説】仮定法の攻略 ~全体像~
高校の英文法でつまづきやすいのが「仮定法」
管理人の視点でまとめてみました。
管理人はブラジル赴任していたのでポルトガル語を学んでいます。そのおかげで仮定法について理解を深めることができたのでその辺りも絡めながら説明しています。
仮定法とは?
端的に言えば「心の中に仮想世界を作り出し、それについて述べる用法」のことです。具体例を出せば「もし~なら、…なのに」「もし~だったら、…だったろうに」といった表現です。
これだけ読むと「そんなに難しく感じない」のですが、勉強をしていくと途中で「あれ??」っていつの間にか分からなくなる人が多いです。管理人もその一人でした。
なぜ難しく感じるのか?
前述したように管理人も仮定法が苦手でした。なぜ、苦手に感じていたのかをまとめてみました。
仮定法「○○」が何を伝えたい表現なのかよく分からない
文法を勉強すると「仮定法現在」「仮定法過去」「仮定法過去完了」といった文法用語に出くわします。そして管理人は「呼び名からどんな用法か想像できませんでした」
命令形、動名詞、to不定詞といった用語であれば文章や表現のイメージできるのですが「仮定法現在」と言われても。。。という感じです。
もちろん勉強すればその瞬間は紐付けられるのですが「そもそもピンと来ない表現」なので、時間が経てばすぐに忘れてしまいます。。。
仮定法過去は過去の内容ではない
例えば次の例文です。
If I were a bird, I could fly to you.(もし鳥だったら、あなたの所へ飛んでいくのに)
「今思っていること」を言っているのに文法上は「仮定法過去」という分類になります。用語の問題だと言われればそれまでなのですが。。。
仮定じゃないのものも「仮定法」という括りになる
仮定法には「提案」「勧告」「要求」も含まれます。ただ、日本語の「仮定」という単語の中にはこれらは含まれません。「提案している内容」=「頭の中で考えていること」=「仮定」と変換できなくもないですが、個人的にはかなり違和感があります。
なぜか時制が変わったり、動詞の原形を使ったりする
仮定法現在は「原形」、仮定法過去は「過去形(ただし、be動詞はwere)」、仮定法過去完了は「過去完了形」を使います。管理人は「仮定法現在」と「仮定法過去」がしっくり来ませんでした。これも文法だからと言われればそれまでなのですが。。。
仮定法の親玉は?
よく分からない「仮定法」ですが、その背景にあるのは「直接法」と「接続法」という考え方です。そして、仮定法は「接続法の一部」となります。この辺りに少しメスを入れていきたいと思います。
直接法と接続法
英文法ではあまり出てこない用語です。管理人もポルトガル語を勉強した時に始めて学びました。端的に言えば、直接法は「現実形」で接続法は「非現実形」です。
もう少し噛み砕いて説明すると、直接法は「実際に起きたこと」「実際に起きること」を表すのに対し、接続法は仮定、希望、想像、疑問等の「心の中で思っているだけの内容」「実際には起きてない内容」を表すのに使われます。
まとめれば次のような形です。仮定法は「接続法の一部」というのがちょっと垣間見えてきたと思います。
法 | 概要 | 説明 |
---|---|---|
直接法 | 現実形 | 実際に起きたこと。起きること。etc |
接続法 | 非現実形 | 心の中で思っていること(仮定、希望、想像、疑問 etc)。現実に起きてないこと。etc |
法の区別はどうする?
いきなり「法」という見出しを使いましたが、これは前述した「直接法」「接続法」のことを指します。そしてヨーロッパの言語では、この「法」をどのように区別するかというと、、、、「動詞の活用」で区別します。つまり、直接法には直接法の活用、接続法には接続法の活用が存在するということです。
ヨーロッパ語圏の言語は動詞活用が多いと聞いたことがある人もいるかと思いますが、その背景がここにあります。ご存知のように、動詞は時制(現在形、過去形など)と人称(一人称、二人称、三人称など)に応じて活用されます。これが二種類あるということです。
下記は管理人がポル語学習時に作ったリストです(赤字と青字が動詞活用末尾の変化)。覚えるの大変でした。
英語における「法」について
前述したように、英文法では「直接法」「接続法」という用語が出てきません。なぜかというと、英語は「直接法メインの言語」だからです。
英語で「現在形」「過去形」という表現を学びますが、厳密には「直接法過去」「直接法現在」です。ただ、英語は直接法がメインの言語なので単に「過去形」「現在形」と呼んでいます。対比や区別するものがないので、敢えて直接法という明示をする必要がないということです。
英語はなぜ直接法メインの言語になったのか?
前述したように、ヨーロッパ圏の言語は直接法と接続法を動詞の活用で明確に区別しています。
英語史を本格的に勉強したことはありませんが、英語も起源を辿ればインド・ヨーロッパ語族に属します。そして、文化的な交流や他国による支配を経て発達してきた言語となります。
あくまで感覚的な話になりますが、管理人は次のような理解をしています。
英語にも直接法や接続法という明確な区別がもともとは存在していた。ただ、言語の発達過程において、その境界が次第に曖昧となり、接続法が直接法に吸収されていった。結果、英語は直接法メインの言語となり、接続法の一部である命令形や仮定法がその名残を残しつつ現代英語でも使われている。
上記理由で、文法は簡略化され、英語が幅広く使われるグローバルスタンダードな言語としての位置を築く一因となっているのだと思います。
接続法と仮定法の関係
ポルトガル語を例として「本来の接続法」と「英語の仮定法」がどのような関係にあるのかをざっくりまとめてみました。
心の中で考えたこととして述べる内容(接続法の一般用法) | 命令、提案、要求 | (全時制) | They suggested to her that she go alone.(彼らは彼女が一人で行くことを彼女に提案した) | ||
当然の内容 | It is natural that the company be accused of causing air pollution.(その会社が大気汚染で告訴されるのは当然である) | ||||
もし...なら | (if,when) | (*1) | When you arrive at the hotel, please give me a call.(ホテルに着いたら電話してね) | ||
現在の事実に反する仮定・内容 | もし...なら | 不完全過去 | 仮定法過去 | (一般動詞) | If I had a lot of money, I could buy a new car.(もし大金が合ったら、車を買うのに) |
(be動詞) (*2) | If i were a bird, I could fly to you.(もし鳥だったら、あなたの所へ飛んでいくのに) | ||||
過去の事実に反する仮定・内容 | もし...だったなら | 過去完了 | 過去完了 | If I had taken care of myself in my youth, I would be in a good heath now.(もし若い頃体に気をつけていたら、私は今頃健康だろうに) | |
*1)仮定法の対象外となりますが、気になる方はこちらを参照ください。 *2)be動詞の過去形は昔はwereしかなかったことに起因するらしいです。 |
接続法は「心の中で考えた内容を伝える表現」です。管理の持っているポルトガル語の文法書にはこれを「接続法の一般用法」として分類しています。
一方、仮定に関しては「接続法不完全過去」「接続法過去完了」の特殊な使い方として一般用法と分けて書かれています。仮定も「心の中で考えた内容」となるのですが、文法上の時制が特定されるため、別項目として分類しているのではないかと思います。
また、一般用法においては内容に応じて時制も変化します。例えば「~を願う」「~を願った」というように時制を変えれば、接続法が使われる「~の部分」の時制も変化します。一方、英語の場合はこれを全て「原形」としているため時制の変化はしません。
説明が長くなってしまいましたが、上記の表から読み取ってもらいたい内容は下記です。
- 英語では「接続法」を「仮定法」という表記にしている
- 英語における仮定法は、接続法の動詞活用を用いずに「直接法の動詞活用」「原形」にて表現している
英語における仮定法は結局何?
仮定法の親玉である「接続法」について説明してきましたが、英語学習者にとって重要なのは「仮定法って何?」ということだと思います。少し抽象化してまとめると次のような形となります。
- 仮定法現在:「今はやってないけど、これからやってよね」・・・原形
- 仮定法過去:「現在の事実に反する内容ですよ」・・・・・・・過去形
- 仮定法過去完了:「過去の事実に反する内容ですよ」・・・過去完了形
動詞の活用について少し補足します。
仮定法現在は「直接法とは異なる」という意識があるので、中立な「原形」を用いているのだと思います。仮定法過去や過去完了は「現在/過去の事実と異なる」ということを時間的な距離を取って表現しているということです。
なぜ難しく感じるかの答え
管理人が冒頭で述べた「難しく感じる理由」についての答えになります。
- 仮定法「○○」が何を伝えたい表現なのかよく分からない
答え:前項でまとめた内容。これは覚えるしかない。 - 仮定法過去は過去の内容ではない
答え:前項の図を参照。過去形を使って「現在の事実と異なる」ということを明示。 - 仮定じゃないのものも「仮定法」という括りになる
答え:英語ではなぜ「接続法」を「仮定法」という用語で統一してしまったため。 - なぜか時制が変わったり、動詞の原形を使ったりする
答え:本来は接続法の動詞活用。ただ、英語は接続法という概念が希薄になってきているのでどっちつかずの「原形」も使っている。
補足)条件節について
仮定法の話とは少し離れますが、条件節についても触れておきます。
学校では「時と条件を表す副詞節中では、未来のことでも動詞の現在形を使う」という文法を習ったと思います。例えば、下記のような例文です。
- When you arrive at the hotel, please give me a call.(ホテルに着いたら、電話してね)
- If you exercise every day, you’ll soon lose weight.(毎日運動すれば、すぐに痩せるよ)
ちなみに、大西泰斗先生の文法書で次のような説明がされています。
「時は心の中」(=未来や過去のことでも、今起こっていると感じれば、現在形を使うことができる)
ただ、本記事を読んだ方であれば、次のような理解ができると思います。「心の中で考えていること」→「本来は接続法」→「英語の場合は仮定法現在」→「動詞の活用は原形」
もともと「時と条件を表す副詞節中」でも動詞の原形を使っていました。ただ、直接法に吸収されてしまって今では「現在形」で表すようになったということです。
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