4.4 仮定法現在と命令形

2020年7月19日

仮定法現在と命令形

文法書の受け売りですが、仮定法現在というのは「要求や提案を表すとき、that節の中の動詞を活用せずに原形を使う文章」のことを言います。具体例を挙げれば次のような文章です。

  • They suggested to her that she go alone.(彼らは彼女が一人で行くことを彼女に提案した)
  • It is natural that the company be accused of causing air pollution.(その会社が大気汚染で告訴されるのは当然である)

そして、同じ原形を使う身近な表現としては命令形が存在します。

両者に共通するのは「今はやってないけど、これからやってよね」ということです。

また、これは心の中で思っている「現実では起きてないこと」となるので分類上は接続法です。つまり、接続法の名残が動詞の原形表現という形で英語の中に残っているということです。

なぜ動詞の原形なのか

少し復習となりますが、下記記事で「英語は直接法と接続法の境界が曖昧となり、直接法メインの言語となっていったのではないか」という話をしました。そして「接続法には直接法と異なる動詞の活用があり、動詞によって明確に法を区別している」ということも併せて説明しました。

つまり、「直接法メインの言語となる」ということは、言い換えれば「接続法としての動詞の活用を意識しなくなる」ということです。そのため、「接続法=直接法とは違うモノ」という意識だけが残り、直接法の動詞活用に属さない「動詞の原形」を使うという簡略化が起きたのではないかと考えています。

また、仮定法現在には時制の一致(*)が起きないという文法ルールが存在ます。例文で示せば次のような形です。

  • They suggested to her that she go alone.(彼らは彼女が一人で行くことを彼女に提案した)
  • They suggest to her that she go alone.(彼らは彼女が一人で行くことを彼女に提案する)

これもルールとして覚えてしまえばよいとは思うのですが、英語では「接続法の動詞活用」→「動詞の原形」という簡略化をしている訳なので、必然的に時制の一致は起きないとも考えることが出来ます。

*時制の一致について
I tell the police that I am British.(私は警察に自分は英国人であると言う)という文章のtellを過去形にすると、普通はthat節の中もその影響を受けて過去形となり、I told the police that I was British.(私は警察に自分は英国人であると言った)となります。これを文法用語で時制の一致と呼びます。敢えて一致させない場合(強調したい時など)もあるのですが、詳細は大西先生の本に書かれているので気になる方は一読されると良いと思います。

動詞の原形以外を使う場合

仮定法現在は動詞の原形を使うことを説明してきました。ただ、動詞の原形以外にも、1)shouldを用いる、2)直接法を用いる、というパターンが存在します。例文で示せば次のような形です。

  • It is natural that the company be accused of causing air pollution.(動詞の原形パターン)
  • It is natural that the company should be accused of causing air pollution.(shouldを使うパターン)
  • It is natural that the company is accused of causing air pollution.(直接法パターン)

簡単に説明すると、shouldを使うパターンは主にイギリスで用いられ「今はやってないけど、これからやってよね」というのをshould(当然そうすべきだよね)を用いて表しているということ。

また、直接法パターンは接続法を使わないカジュアルな表現ということになります。この辺りの詳細については、表現のための実践ロイヤル英文法に掲載されているので、興味のある方は一読されると良いと思います。

上述の内容から「接続法と直接法の境界が曖昧になっている」「英語は直接法メインの言語」というのが感じ取れると思います。

仮定法現在というネーミングについて

上述したように仮定法現在は「今はやってないけど、これからやってよね」ということを表す表現です。でも、仮定という日本語は「もし~なら/だったら」を意味するのになぜ仮定法の括りなの?という疑問も持つ方も多いと思います。実際、管理人もそのように感じました。ここでは、その辺りの分かりにくいネーミングの背景について少し考察したいと思います。

後ほどポルトガル語の接続法一般用法について説明しますが、「今はやってないけど、これからやってよね」という形は接続法の現在形(接続法現在)で表します。英語において、接続法の名残を強く受けているのは「仮定法」となるため、接続法=仮定法という用語統一をした結果、仮定法現在というネーミングになったのではないかと考えています。

ただ、非常に分かりにくいネーミングではあるので、命令形=「今はやってないけど、これからやってよね」ということ。命令形と同じ原形を使う仮定法現在も「今はやってないけど、これからやってよね」を意味すると理解しておけばよいと思います。

ポルトガル語における接続法一般用法(概要)

ポルトガル語の接続法は、英語の仮定法現在や命令形以外にも幅広く使われています。つまり、仮定法や命令形は接続法の中の一つということです。

そして、英語の仮定法現在に相当するポルトガル語表現は、仮定法ではなくポルトガル語の接続法一般用法となります(少なくとも管理人はそのように理解しています)。そのため、ここでは接続法一般用法について簡単に触れたいと思います。

接続法一般用法の例として、「彼が勉強することを願う」という場合、彼が勉強している姿を想像して(接続法)、それを願う(直接法)という文構造となります。英語で無理やり表現すれば、I hope that he study*(*studyは接続法の活用形にする)となります。

上記で説明したように、接続法の名残を持つ仮定法現在は時制の一致を受けないという特徴がありました。一方のポルトガル語の接続法では「時制の一致」をしっかりと受けます。具体的には、直接法動詞を基準として、接続法動詞が過去なのか未来(現在)なのかによって、下図のように4パターンが存在します。正確には、同時進行(今まさにやっているのを願った/願っている)パターンも存在するのでもう2パターン追加となるのですが、ここでは割愛しています。

上記の①~④のパターンをポルトガル語にすると次のようになり、接続法になっている青字部分(estudar:英語のstudyに相当)が直接法の時制の影響を受けて活用しているのが分かると思います。

  1. ① Eu espero que ele tenha estudado.(彼が勉強したことを願う)→接続法現在完了
  2. ② Eu espero que ele estude.(彼がこれから勉強することを願う)→接続法現在
  3. ③ Eu esperei que ele tivesse estudado.(彼が勉強したことを願った)→接続法過去完了
  4. ④ Eu esperei que ele estudasse.(彼があれから勉強することを願った)→接続法不完全過去

Eu=I, espero=hope, esperei=desired, ele=he, tenha=haveの接続法現在形、tivesse=haveの接続法不完全過去、estudado=studyの過去分詞と置き換えて頂ければ、文構造のイメージは掴めるかと思います。なお、矢印で示しているのは接続法活用形の呼び名となります。

英語からポルトガル語を学ばれる方に意識して欲しいのは下記の3点となります。

  • 仮定法以外にも接続法は普通に使われている
  • 接続法にも時制が存在し、時制に応じて動詞の活用が変化する
  • 接続法は時制の一致の影響を受ける

ポルトガル語における接続法(詳細)

本記事は、英語⇒ポルトガル語の架け橋という趣旨で書いています。そのため、上述した英語との違いを認識した上で、基礎編で紹介したブラジルポルトガル語 中級を読まれると理解が深まると思いますので、本格的にポルトガル語を学ばれる方はそちらで学習頂くのが良いかと思います。

Posted by linguagem